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「新たな武器を手にする」
2013.2.8 文=丹律章

 2012年の年末、イトウクラフトはカーディナル3、および33の両機に対応するカスタムパーツを発売した。
 僕自身、伊藤がカーディナル3について多少の不満を持っていることは知っていたが、パーツを一般ユーザー向けに販売するというのは、寝耳に水であった。
 ミノーを作るのはハンドメイドの延長として理解できた。ロッドについてもロッドビルディングをする人は意外に多いから、それもどうにか理解の範疇だった。だが、リールとなるとちょっと違う。そういう機械的なものは、もっと大きなメーカーじゃないとできないものだと、僕は思っていた。
 それを可能にしたのは、伊藤がメーカーを起こして以来の様々な人とのつながりだった。
 伊藤は言う。
「10年前だったら、やろうと思ってもできなかったと思う。今は、色々な人と横のつながりができて、自分達にできることが年々増えてきた」
 それによって伊藤はリールのカスタムパーツの販売にたどり着いた。今回発売したカスタムパーツ第一弾のパーツ総数は9点。大きなものはサイドプレートで、その他はネジとかワッシャーなどの小さな隠れた部品だ。詳細はこのウェブ上でレポートされているのでそれに譲るが、これを装着することで、約20gの軽量化になる。
 カーディナル3のオリジナル重量は225g。10%弱の軽量化だ。20gと聞くと大した数字じゃないが、10%となると大きい。
「車でもなんでも、軽量化っていうのは最高のチューニングなわけです。リールの軽量化によって釣りが楽になるし、何より釣りが楽しくなります。カーディナルを使って渓流釣りを楽しんでいる方は、是非試してほしいと思います。少量生産で切削作業も1つひとつ時間がかかるので、カスタムパーツの価格は安くはないですけど、効果は絶大。私自身、今後オリジナルのカーディナルで釣りをすることはないと思う。いったん軽いリールに慣れてしまったら、もう戻れない」
 もう戻れない、とまで伊藤が言い切る軽量化は、彼自身の怪我によって生まれた、文字通り怪我の功名であった。

 2011年6月はじめ、伊藤は右手に怪我を負った。休日に作業場で作業をしていて、工作機械で靭帯を2本切断してしまったのだ。
 すぐ病院に行って処置はしてもらったが、右手はギプスで固定されてしまった。かろうじて指先は出ているものの、ロッドを握れる状態ではない。病院ではギプスが取れるまで2か月半と言われた。
 時は6月あたま。サクラマスはともかく、渓流シーズンがそろそろ本格化する時期だった。
 そこで伊藤は思ったのだ。
「このギプスがもう少し短かったら、ロッドが握れるんじゃないか」
 何というか……よく言えば、釣りにかける情熱の凄まじいまでの熱さ(悪く言えば、目も当てられない釣りバカ。だってそうでしょう。ギプスはきちんと直すための処置。普通は怪我を直すことを第一に考える。それなのにギプスを自分でチューンしようとするのだから普通じゃない)。
 そして伊藤は、ルアーやランディングネットなどを作るための工作機械を使って、ギプスを短くしてしまったのだ。そしてもちろん、すぐに釣り場に行ってみた。
「ところがね、やっぱりギプスが邪魔して、リールが握れないわけです。で、あきらめて帰ってきて、今度は左投げに挑戦しようと思った。左投げだと右手でリールを巻くから、カーディナルじゃハンドル交換できないから無理でしょ。それで、ロッドにイグジストを付けて川に行ってみた。そしたら難しいのよ、左投げって」
 右投げの人間がルアーを左で投げるのは難しい。当然だ(普通は川に行く前に気が付くが)。
「それであきらめて帰ってきたんだけど、しばらくしたらまた、どうしても釣りがしたくなって、さらにもう少しギプスをカットして、川に行ってみた。そしたら、ちょっとだけ10m位投げられたんです。痛かったけど。それで分かったことは、ロッドを振ることは我慢できる。一番痛いのは、キャストの最後にロッドを止めることだってこと。全体の重量に遠心力がプラスされたものを、ピタッと止めなければならない。その止める瞬間に掛かる力が、これほど大きいのかと、痛さを感じて改めて気付いた。その時イグジストを使っていたんだけど、それでも限界だった」
 イグジストの2004が170g。それに対してカーディナル3が225g。その差は大きい。
「そこで、カーディナルの軽量化を本格的に考えてみようと思ったわけです。最初は、ローターカバーの中にあるバランサーを削り取って、次にハンドルをねじ込むメス側を支えているテーパーのついた筒状のパーツ、これをアルミで自作してみた。旋盤があれば作業自体はさほど難しくないですから。カスタムパーツの第一弾でいえば、ドライブシャフトギア・スリーブという名称を付けたパーツです。さらに、ネジを1か所軽いものに変更した。これで、15gほどの軽量化になったんです」
 効果は絶大だった。
「なんだかんだで3週間くらいでギプスは自分で外してしまって、医者には『こんな患者見たことない』ってあきれられたけど、それで釣りを開始することができた。右手は100%の状態じゃないわけで、リールが軽いのは劇的に楽だった。そこで軽量化の有効性を改めて、身をもって感じることができたので、徹底的にそれを突き詰めてみたわけです。カーディナルの金属パーツは真鍮製のものが多く、これをジュラルミンや樹脂にするだけで軽量化ができたんです」
 道具がカスタマイズされるとき、時にそれはビギナーには使いにくいものに変貌を遂げることがあるが、軽量化は間違いなく誰にでも有効なチューンだ。
 そしてイトウクラフトが提案するカーディナルのカスタムチューンは、さらに続きがある。
「第一弾が、軽量化を主な目的にした、9つのパーツセットですが、第二弾はスプールになります。正規品をイトウクラフトでチューンして発売する予定です。フロントのエッジ部分にテーパーを掛けてライン抵抗を少なくすること。それとコルク製のアーバー(下巻きを不要にする上げ底パーツ)をセットします。これによって軽量化も図ることができます。たとえば6ポンドのラインで下巻きすると、180mで約5.3g。既存のプラスチック製のアーバーなら3.3gあるんです。これが弊社で発売するコルク製アーバーなら約1g。プラスチックアーバーと比べても2gちょっとの軽量化になります」
 さらに第三弾が控える。
「ハンドルとノブのセットを発売する予定です。ノブは、自分自身あの形状がイマイチ気に入らなくて……魚がヒットしてアワせるときに、ハンドルを回転させてラインスラックを取るわけですが、そのときにすっぽ抜けることがあるんです。それが原因で、年に2~3匹、いいヤマメを逃がしている。これを防止するために、すっぽ抜けにくい形状のノブを付けたハンドルを開発中です。オリジナルのハンドルよりは軽量なものになるので、第三弾まで組み込めば、200gを切る重量に持って行けるはずです」
 200gを切って、10%以上の軽量化を実現させたとしても、現実的に国産のリールでさらに軽いリールは存在する。前述したイグジスト2004は170gだ。軽量なものというだけなら、こちらを選ぶという選択もあるはずだ。
「でも、国産のリールにはまねのできないカーディナルならではの性能があるんです」
 それは、このウェブサイトや釣り雑誌などでも何度か伊藤が言ってきた、「流れを感じる能力」ということになる。
 流れを感じるためのリールに求められること、それは何なのだろう。
「あからさまに言ってしまうと、今の国産の高性能リールは様々な釣りに対応するために汎用性を求めすぎて、パワーがありすぎてしまうんです。だから小さな流れの変化を感じにくい。でもカーディナルは非力なので。逆に小さな変化が手元に伝わってくる」
 確かに日本が世界に誇る2大メーカーのリールは、ここ30年ほどで海外の他社をリードし、現在でもその進化を突き進めている感がある。たとえば30年前は、スピニングリールで水深200mの海でジギングを行うことは相当に無理があることだった。しかしそれは現在劇的に改善され、巻くという能力はベイトリールに迫るほどだ。
「本流でダウンクロスの釣りをするなら、結構ルアーに抵抗がかかるので、国産の高性能リールでも抵抗の変化は分かりやすい。でも、アップストリームになると、リップが受ける抵抗はわずかなので、分かりにくくなってしまう」
 たとえばこういうことですと、伊藤は話を続ける。
「車で坂道を上るとします。400馬力もある高出力の車なら、100キロの人間を1人余分に乗せたところで楽々登れるわけですが、非力な小型車に100キロの人を乗せると、それだけでパワーは食われて登攀スピードは落ちてしまう。現在の最新スピニングに比べると、カーディナルは小型車のようなものです」
 当時の開発者の意図とは別に、カーディナル3は、渓流のアップストリームに最適なリールの立場(少なくとも伊藤の釣りに適しているという意味では)を確立した。そして、発売から30年以上たった今、そのリールはより優れた形に生まれ変わろうとしている。
 もちろん、今のまま、オリジナルのリールを使い続けるのもひとつの道ではある。そこには、これまで通りの釣りがあるだろう。しかし、渓流のルアーをもっと楽しみたいと思うなら別の道へ進めばいい。その新しい世界への入り口は、既に開かれている。


 

「カーディナルを、真の渓流スペシャルに」 PARTⅢ  
Custom Parts to reduce the weight of Cardinal 3/33 series
2012.12.07


 前回までの記事では、伊藤がカーディナルに見い出している利点と、軽量化によって生まれる大きなメリットについて話を聞いたが、今回は各パーツの詳細や製作にまつわる話を尋ねた。
 カスタムパーツ第一弾のセット内容は、前回写真で紹介した通り下記の9点。

#01 サイドプレート
#02 サイドプレート・スクリュー
#03 スペーサー(3/33オリジナルおよびオリムピック製復刻に使用)
#04 ベールマウント・スクリュー
#05 スクリュー
#06 ドライブギアシャフト・スリーブ
#07 ドライブギアシャフト・スリーブ(代替パーツ)
#08 ナット
#09 プロテクティングリング


【発想の具現化】

 まずは軽量化のための素材についてだが、サイドプレートには軽量化と共に変形抑止を図るカーボン樹脂を用い(エンブレムはアルミ製)、各スクリュー、ナット、プロテクティングリングにはジュラルミン、ドライブギアシャフト・スリーブには滑りが良く耐油性にも優れるジュラコンを使用している。
 サイドプレートは、ひとつひとつマシニング加工によって削り出され、丁寧な手作業によるサンディングを経たのち、伊藤自らの手により塗装と磨き作業が繰り返される。「装飾品ではないけどね」と言いながらも、全ての作業を終えて出来上がったサイドプレートは何とも言えず深い輝きをまとっている。
 自然豊かなフィールドを身近に持つ超現場主義の釣り人として、あくまで道具の機能性を追求する発想と、モノを作るクラフトマンとしての感性が同時に具現化され、ひとつのアイテムが完成する。イトウクラフトならではの製品開発がここにもハッキリと見て取れる。
 耐久性に関しては、テストに2シーズンが費やされた。
「サイドプレートの変形、歪みもないし、ジュラコン製のスリーブについても耐久性、耐摩耗性、共に通常の使用ではまったく問題なかった」


【オリジナルと復刻の違い】

 伊藤が使用しているカーディナルは昔も今もオリジナルの3であり、当初はそれをベースにカスタムパーツの試作を行なっていたが、復刻モデルとのパーツの整合性をチェックするべく、伊藤はこれを機に初めて復刻(ピュアフィッシング製)のカーディナル3を手に取った。
 その時の感想をこう語る。
「復刻を手に持った瞬間、何かゴロンっとしてるというか、デカいなって思ったんだよ。実際に測ってみたら、まあ個体差もあるんだけど、やっぱりオリジナルの3より復刻の方が若干ボディが厚かった。例えばミノーのボディがコンマ2mm厚くなれば全然違って見えるわけで、このオリジナルと復刻のボディ厚の違いも、ぱっと見てすぐに気付いたよ」
 リールのボディ厚が異なるということは、調節が必要になるのはサイドプレートを留めるスクリューの長さである。サイドプレート・スクリューに付属しているプラスチックの「スペーサー」が、そのボディ厚の差を調節する役目を果たしているのだ。
 詳しくは取扱説明書にも記載されているが、03年のピュア復刻以降のモデルに関しては、必ずスペーサーを外して装着すること。スペーサーを付けたまま装着してしまうとサイドプレートが歪み、割れる原因となるのでくれぐれもご注意を。(オリジナルおよびオリムピック製復刻を使用の場合は、スペーサーを付けたままサイドプレートを装着)


【ベールマウント・スクリュー】

 ベールマウントの取り付けスクリュー(ラインローラー側と反対側の2本)は、見ても分かるようにもともと頭の大きさに対して軸が細いため、締め付ける時にオーバートルクになりやすい。改めて言うまでもないことだが、装着時の注意点としてはスクリューを締め過ぎないこと。万が一スクリューが折れてしまうと、ネジ穴に折れ残ったスクリューの除去はひじょうに困難だ。
「軽量化の恩恵を受ける分、当然純正のスクリューよりも強度は劣るけど、適正なトルクで締める分には何ら問題ない強度だよ」
 大きなドライバーを握りしめて…といった力はまったく必要なく、伊藤の表現を借りれば、「人差し指と親指の二本指でドライバーを回して締め付ける程度。指の力は個人差もあるけどね」。
 ちなみにこのベールマウント・スクリュー、特にラインローラーの反対側が頭でっかちの形をしているのはご存知の通り回転のバランス取りが目的。ということは、ここを軽くしてしまうとそのバランスが崩れるんじゃないか? とも思いがちだが、伊藤の答えは明快。
「スクリューの軽量化によって回転のブレが気になるくらい、そんなに速くリールを巻くことって渓流である? ないでしょう(笑)。あるとしたらルアーを回収する時くらいだよ」


【ドライブギアシャフト・スリーブ】

 ハンドルを外すと、ボディ側にインサートされているスリーブ。これは純正のパーツリストには記載されていない箇所になる。
 今回リリースされる軽量化カスタムパーツは基本的に誰もが簡単に交換・装着できるものだが、唯一難儀するかもしれない部分がこのドライブギアシャフト・スリーブ。ボディ側に傷が付かないようビニールテープやマスキングテープ等をしっかりと巻いてから、ネジプライヤー等を使って引き抜くのだが、なかには復刻で外れにくい個体もある。もし無理そうな場合はもちろんイトウクラフトで相談を受け付けるので、一度ご連絡を。
 またこの部分は、外した純正パーツに傷が付きやすいので、ノーマルの状態へ戻したい時のために代替パーツ「#07」が付属する。こちらは真鍮製で、粘り強く、滑りも良い。傷も付きづらい仕様だ。

 カスタムパーツを装着することによって、きっとカーディナルにさらなる愛着が湧いてくるはず。そして軽量化のメリットをフィールドで実感すれば、この古い設計のリールがますます好きになって手放せなくなる。ぜひ、あなただけの愛機を今まで以上に可愛がってほしい。







 

「カーディナルを、真の渓流スペシャルに」 PARTⅡ  
Custom Parts to reduce the weight of Cardinal 3/33 series
2012.12.1


【軽量化の狙い】

 渓流のルアーフィッシングそのものが現在ほど広く認知されていなかった時代から、伊藤にとってまさしく相棒となり続けてきたリールが、ABUカーディナルだ。
 そして前回の記事でお伝えした通り、カーディナルを使う利点はそのままに、ロッドを含めたタックル全体の機能性をより高めるために伊藤が着手したのが「軽量化カスタムパーツ」である。
 まず数字の面で言うと、いま手元にあるカーディナル3で量ってみると今回発売されるカスタムパーツに換装することで、約20グラムの軽量化が実現している。

 では、僕らカーディナルユーザーが最も気になるところ、いつも使っているカーディナルが約20グラム軽くなることによってどんなメリットを得ることができるのか?
 きっとリールに興味を持つ人なら、20グラムという数字の「大きさ」に気づくだろう。
 伊藤はそのメリットとして真っ先に、キャスティング性能の向上を挙げた。
 渓流のルアーフィッシングにおけるキャストとは、改めて言うまでもなく釣果や釣りの楽しさを大きく左右する重要な要素だ。他のジャンルの釣りと比べてみても、これほど手数の多さ、手返しの速さを追求する釣りは類を見ない。もちろんその上で、精度や飛距離、そしてまた様々なシチュエーションに応じてあらゆる角度からロッドを振る自在性がシビアに求められる。
 だからこそ、カーディナルの軽量化がキャスティング性能に非常に有効に働くのだと伊藤は言い切る。


【エキスパートカスタムのキャスト性能をより自在に引き出す】

 伊藤のキャストと言えば動画を見ても分かるように、コンパクトなモーションから繰り出す初速の速いライナーキャストである。主に手首だけを使った小さな振りで、ロッドのしなりと反発力を自在に引き出しルアーを飛ばす。エキスパートカスタムのファーストテーパーおよび40 t 超高弾性カーボンが内包する強靭なトルクを、十二分に利用して驚異的な飛距離を稼いでいる。渓流ルアーマンのマスターすべき、現場で磨かれたキャストだ。
 伊藤はこう言う。
「間違いなくカーディナルの軽量化によって、ロッドが持つマックスパワーのキャスティング性能を引き出しやすくなった。これは通常のカーディナルの重さが体に染みついている人なら誰もが実感すると思う。リールというのはロッドグリップのように手のひらの中に感じる重さとはまた違って、手から離れた所で重さや遠心力が働くから、余計に重量の違いがキャストに影響しやすいんだ」
 具体的に、どんな違いが実感できるのだろう?
「まずブランクを曲げるための振りが、より速くなる。そしてそこで溜め込んだトルクを、リリースの瞬間にビタッとグリップを止めることで一気に放出する。初速のあるキャストで飛距離を稼ぐためには、この『曲げ』と『止め』が大事なんだよ。強い反発力を生み出すためにブランクをバットから曲げて、なお且つグリップを一瞬で止めることができるから、一気に反対方向へ強烈な『G』が働く。その結果、ズバ抜けた飛距離が出せるんだ。カーディナルの軽量化によってそれが格段にやりやすくなった」

 何となくの考えでは、初速が速くなる分、リリースのタイミングが取りづらくてコントロールが難しくなるんじゃないか?と思ってしまうけれど、それは違うと伊藤はキッパリ言う。
「今回の軽量化で自分が一番感じたことは、ブランクのしなりがより明確に手元に伝わって、しっかりトラクションが掛かるということ。だから、リリースポイントがすごく掴みやすい。リリースする瞬間のグリップの『止め』も今まで以上にきちんと決まるから、ピンスポットへのコントロール性がより高まる。本当にキャストがラクに決まるよ。バックキャストが苦手だった人も、これでずいぶん決まるようになると思う。一度この軽量化パーツを組んで使ったら、もうノーマルスペックのカーディナルには後戻りできないね」
 キャスティング技術の向上には、どうしても時間と人それぞれのセンスが関わってくるが、道具の進化が、一歩二歩先の世界へ僕らを導いてくれる。
 当然軽量化により、ノーマルのカーディナルに比べ疲労感も軽減されると言う。
「一連の動作がより軽快になってラクになるから、これまで以上に魚との駆け引きに意識を集中させることができる。ヒットした魚の動きもより明確に伝わる。メリットが大きくて、デメリットは何ひとつない。いいことづくめだよ。…そう言えば、いつも薬指のところにできてるタコが今年はなくなったな(笑)。それも体への負担が軽くなった証拠だよね」

 カーディナルの必要性は微塵も変わらない。渓流を釣るための道具として、カーディナルは現代のリールが失ってしまった唯一無二のパフォーマンスを有している。
 軽量化カスタムパーツの登場によって、そのカーディナルの性能がさらに生かされる。渓流のルアーフィッシングがもっと楽しくなり、そしてカーディナルがもっと好きになるはずだ。
「例えば、初めてエキスパートカスタムを使いこなせた時に、そのキャスティング性能にみんなビックリしたと思う。その時の感動が、同じロッドを使ってまた味わえる。それくらいのメリットがこの軽量化パーツにはあるんだ。ぜひ一枚上の釣りを体感して欲しいね」

(次回パートⅢでは、各パーツの詳細や製作にまつわるお話を掲載予定です)






 

「カーディナルを、真の渓流スペシャルに」 PARTⅠ  
Custom Parts to reduce the weight of Cardinal 3/33 series
2012.11.21


【リールの進化】

 渓流を釣る時、カーディナル3は伊藤秀輝にとって、絶対になくてはならない長年の相棒だ。古い道具への単なるノスタルジーではなく、実戦機としてがんがん使い込み、唯一無二とも言える「アップストリーム専用機」としての性能と価値を現場で見い出してきた。伊藤が提示してきた渓流アップストリームのミノーイングは、カーディナルがあればこそ完成されたと言ってもよい。
 その伊藤の手によって、カーディナルが新しい世界へ進む。
 伊藤いわく、「渓流のアップストリームを追究する上で今まで頼れる相棒となってきたカーディナルを、自分の手で、真の渓流スペシャルに進化させたかった」
 自ら作り出すカスタムパーツによって、自分の釣りを支えてきたカーディナルをさらなる高みへ。
 ロッドに装着した際のタックル全体の機能性をさらに高めるべく、伊藤はカーディナル用カスタムパーツの試作とテストを繰り返してきた。
 そのカスタムパーツの第一弾が、満を持してリリースされる。


【カーディナルを使う理由】

 まずは、なぜカーディナルなのか? という所から話を進める必要があるだろう。
 シンプルで無骨なデザインの恰好よさやクラシックリールとしての価値はひとまず置いといて、その「性能」にこそ重大な意味、確かなメリットがある。だから手放せないのだ。
 これまでも雑誌やウェブで伊藤が何度か触れてきたけれど、サミングのしやすさはもちろんのこと、何と言っても、ハンドルを通して水中の情報を細やかに手元に伝えてくれるカーディナルならではの優れたリーリング感度が、伊藤の釣りを根底から支えているのである。
「ルアーの動きに1cmの無駄も作りたくない。そのためには、わずかな瞬間でも水中の情報が伝わらない状態を作りたくない。ミノーのリップが水を噛む感じ、微妙な水流の変化、そういう目には見えない水中の様子をきちんと正確に感じ取れるからこそ、思い通りにヒラを打たせて、一瞬一瞬の魚との駆け引きを次々と展開できるんだ。特にリップの抵抗を捉えづらいアップストリームの釣りでは、カーディナルがなければ本当に釣りが成り立たないよ」
 そしてまた、もともとパーツが少なくシンプルな構造ゆえの、丈夫さ、メンテナンスの容易さも、渓流という過酷なフィールドで使い込むには必要不可欠な要素だ。
「厳しい使用環境だからこそ信頼の置ける道具を持ちたい。もし何か不具合が起きても、すぐに直せるもの。車でもバイクでも昔からオフロードレーサーは現場でメンテしやすく出来てるでしょ。それと同じこと。リールで言えばそれがカーディナルなんだ。釣りのジャンルの中でも、我々の行く山岳渓流というフィールドは本当に過酷だと思う。車から遠く離れて、長時間山の中を歩く、でかい岩をいくつも乗り越える、岩壁をヘツって先へ進む、アップストリームの釣りと言ったらそういうフィールドだから、やっぱり壊れにくくて、何かトラブってもその場で修復できる構造じゃないと道具にならない。登山道具と一緒。リールが壊れたからと言ってすぐに車に戻れる場所じゃないからね」
 渓流、しかもアップの釣りを展開する上流部は、道具にとってとりわけシビアな環境なのだ。
「本流の釣りとは、また要求されるものが違う。今時の国産リールとか、ベアリングをたくさん配置したリールでは不安でしょうがない。みんなもよく経験してると思うけど、例えばメインギアやハンドルノブが砂を噛んでしまっても、カーディナルならその場で簡単に砂を洗い流すことができるでしょ。パーツの交換も簡単。厳しい条件下でこそ、このメリットが生きる。渓流で求められるフットワーク性をまったく損なわない、心から信頼できるリールだよ」


【軽量化こそ、カーディナルにとって最高のカスタム】

 伊藤が手掛けるパーツは、言うまでもなく装飾品ではない。あくまでも実釣における機能性を突き詰めたものだ。その概要を伊藤に尋ねた。今回リリースされるカスタムパーツ群を装着することによって、カーディナル3および33シリーズは、どのように変わるのか?
「開発意図は、カーディナルの軽量化。本来カーディナルが持っている長所をそのままに、ロッドを含めたタックルのトータル・パフォーマンスをさらに向上させる。そのためにはこの軽量化こそ、カーディナルにとって最も有効なカスタムなんだ」
 これが長年カーディナルと共に歩んできた伊藤の解答。
 伊藤の言うカーディナルの最大の特長、渓流アップストリームにおいて『水中の情報を正確に手元に伝える』という本来のリーリング・パフォーマンスを生かすことが大前提になるので、それを生み出しているギアシステムはイジらず、もちろんメンテのしやすさも損なわない。ユーザー自らがカスタムパーツの換装を行なうだけで、タックル全体の機能性を高めることができる。そこにコンセプトがある。
 では、カーディナルの軽量化によって、僕ら釣り人は具体的に何を得ることができるのだろう?
(PARTⅡへ続く)



 

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