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短編釣り小説、連載開始について

――短期集中連載・WEB小説「スーパー編集者 鈴木聡一郎君」が連載開始になりました。開始と言っても、突然な感じが否めないので、この物語のバックグラウンドというか、どうしてこういう物語を書くことになったのか、そのいきさつを作者の丹さんに伺いたいと思います。

丹 発想自体は、10年くらい前なんです。2003年とか、それくらい。確か秋の初めごろだと思うんですけど、久しぶりに伊藤さんと和賀川の支流に釣りに行きまして、その日は雨がちだったのかなあ、それに先行者がいたりして、釣り自体はあまり良くなかった。で、朝イチに釣りをして車に戻った時に、バカ話をして盛り上がったんです。その時の釣りは取材とかじゃなく、完全にプライベートの釣り。カメラも持っていないような。

――釣りの途中で、どうでもいい話で盛り上がることってありますね。

丹 そう。完全にそういう感じ。ちょっと動いて腹も減ったので、買ってきたコンビニおにぎりを食べながら、お茶を飲みながら、車のリアハッチを開けて1時間ぐらい話をしたような気がします。

――釣りとしては大事な朝の時間に、1時間も?

丹 そうですね。だから、朝イチの反応を見てあまりよくないなと。人も多いし、焦って釣りしてもいいことないなという判断だったんじゃないですかね。はっきりとは覚えていないんですけど。

――なるほど。

丹 でね、どういう展開だったのかは忘れたんですけど、釣りの雑誌関係者の中にも、川を歩けない人がいるっていう話題になったんです。僕のようなライターとか、カメラマンとか、編集者とかの中にそういう人がいるって。

――仕事で川に来るけれど、歩くのに慣れていない人ということですね。

丹 そうです。もちろん、そういう人はいるんです。そもそも釣りが趣味でないとか、バスとか海はやるけど渓流はやったことないとか。そういう人に、いきなり渓流を歩けって言っても無理がありますよね。伊藤さんもいろいろ取材で人を見ているし、僕もそういう人を見ている。そこから飛躍して、そういう人の話を文章にしたら面白いんじゃないっていうことになった。

――それは、伊藤が言ったんですか? それとも丹さんが……

丹 それは覚えていないんです。僕はその時点で、「ウグイ将軍」という、ふざけたキャラクターを主人公にした記事を書いていたし、鱒の森にたまに書いている「セイラック」も、すでにシリーズものとしてあった。そういうのを前提にして、ちょっと面白い文章を書けないかということなんですが、どちらが言い出したかとなると、覚えていないですねえ。
 その和賀川でのバカ話の時点で、結構ディテールまで話したんです。僕が鮮明に覚えているのは、伊藤さんが言った体型の話。こういうのはどうかっていう提案なんですが、「上半身はでっぷりと太っているんだけど、下半身が貧弱で、足が鉛筆みたいに細い」というの(笑)。そりゃ川歩きはできないですよねえ。こんな体型のやつがいたら、それだけで笑えるし、実際にその場で相当笑い転げた記憶があります。

――なんかその話は、飲み会の席で聞いたことあります(笑)。

丹 僕が考えたのは、金持ちのボンボンっていう設定ですね。釣りのことも川のことも何も知らず、わがままな金持ち編集者。たとえば、道路から渓流に下りるのって、急な崖みたいなところを降りるとか、普通にあるじゃないですか。そういう場所を降りられずに、上の方でうろうろしていて、釣り人が川で釣れたよーって叫ぶと、これで撮ってくださーいっていって、高級カメラを崖の上から普通に投げてよこすようなやつ(笑)。そういうのどうかなって思ったんです。逆の意味でスーパー編集者ですよね。そういうダメなスーパーな奴のお話でしたね、最初は。

――そのいう内容まで、その時に話したんですか?

丹 多分したと思います。で、金持ちらしい名前ってことで、聡一郎っていうのも決まったんじゃないかな。いそうでしょう。聡一郎っていう名前のお金持ちの息子って。ショウとかタケシとかマコトっていう名前より、聡一郎の方が、それっぽい。先祖代々、男の名前には「聡」の文字が入っているとか。

――分からないでもないですけど。

丹 苗字は何となく平凡なのがいいなと思って、鈴木。「スーパー編集者 鈴木聡一郎君」っていうタイトルは、結構早い段階で決まったんです。

――その設定と、実際に今回書きあがったものとは、ずいぶん違う部分があると思いますが。

丹 そうですね。「スーパー編集者 鈴木聡一郎君」は、その後もずっと僕の中にあって、時間が空いたときとかに考えたりしていたんですけど、上半身筋肉で下半身がヘナヘナっていうのは面白いけど、現実味としてはどうかとか、わがままなアホ編集者を、物語の主人公として好きになれるかとか、いろいろ考えているうちに、体型はただのデブの方が分かりやすいとか、スーパーな方向性を少し違うスーパーな方に振ってみようとか、そんな紆余曲折があって、今の形ができあがってきました。本当のことを言うと、これとは違う形の話も、いったん書き始めたことはあるんです。4年くらい前かな。でも、どうもそのときの設定では話が進まず、今回新しく設定を見直して一応完成に至ったわけです。

――構想10年の大作というわけですね。

丹 大作じゃないですけど、構想10年ってとこは、間違いないですね。10年の間にも、たまに伊藤さんとも話題にはなっていたんです。それは具体的にどう進んでいるとかいう話ではなく、あんな馬鹿話があったよねっていうレベルですけど(笑)。

――丹さんと伊藤が10年前にしたバカ話から生まれた物語「スーパー編集者 鈴木聡一郎君」は、毎週金曜日にアップいたします。全10話。お楽しみください。