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FROM FIELD TOP>■釣行記IX (#41)
PROFILE
いとうひでき。ITO.CRAFTがリリースするロッドやルアーは、アングラーとしての彼がフィードバックし、クラフトマンとしての彼がデザインして生まれる。サクラマスやギンケしたスーパーヤマメを狙う本流の釣りも大好きだが、根っこにあるのはやはり山岳渓流のヤマメ釣りだ。魚だけでなく、高山植物など山のこと全般に詳しい。野性の美しさを凝縮した在来種のトラウトと、それを育む東北の厳しい自然に魅せられている。1959年生まれ。

「雪シロのマス釣りに高ぶる」 伊藤秀輝 #41 
2016年4~5月中旬、秋田県
文=佐藤英喜

TACKLE DATA
rod:EXCプロトモデル, 及び現行モデルEXC860MX/ITO.CRAFT
reel:Exist Hyper Custom 2508, Certate 2508PE-H/DAIWA
main line:Cast Away PE 1.5/SUNLINE
lure:新型スプーン プロトモデル/ITO.CRAFT



『虫が騒ぎ出す』

 マス釣り歴32年、若かりし20代後半から30代の頃は、春が来れば文字通りマス釣りに明け暮れていた。
 その当時騒いだ虫が、今また伊藤秀輝の頭と身体を激しく揺さぶっている。
 きっかけは言うまでもなく、秋田県のサクラマス解禁日が早まり、遂に慣れ親しんだ秋田の河川でも雪シロ期のマス釣りが楽しめるようになったこと。
 もちろん、岩手や山形の河川に足を運んでは雪シロ期の釣りをやり込んできたわけだが、「それでもやっぱり、米代をはじめとする秋田の川で、となれば、挑むテンションが違うよね」と伊藤は言う。6月解禁の時代には味わうことのできなかった秋田本来のポテンシャルに、まさしく心が躍っているのだ。
 サクラマスフィールドとして全国的にも抜きん出たキャパシティーを持つ米代川水系を筆頭に、伊藤にとって地理的にも身近な秋田の河川で、遡上期のマス釣りを楽しめるようになったことは大きなターニングポイントとなる。

「マス釣りの季節と言ったら、4月5月。それも田んぼの代掻き水が出るあたりまでが、勝負の面白い時期だよな」
 大好きな雪シロを思う存分攻め抜いて、いいマスをたくさん手にしたい。
 そのためには新たな武器も必要となる。
 その一番手が、雪シロ対応の新型スプーンである。
「解禁が早まってからずっと新しいスプーンのセッティングを練ってきて、ほとんどのマスをこのプロトで釣ってきたけど、いかんせん昨シーズンは、冬場の降雪量が少なくて雪シロが早く収まってしまったのが残念。不完全燃焼だったな。本当であればスプーンは昨年の内に完成させる予定ではあったけど、より完璧な性能で世に送り出すために、もう1シーズン、時間を掛けて雪シロの流れで使い込むことに決めた」
 多くの釣り人にとっては手強い雪シロが早く終わり、簡単に言えば釣りのしやすい状況が続いた昨シーズンだったが、新型スプーンに着手している伊藤にしてみれば何とも言えないジレンマがあった。完成まであと一歩という所まで来ながら、まだ試し足りない。それほどまでに雪シロの流れは特殊だということなのだろう。
「単純な流速と、雪シロ期の押しの強さとでは、全く別の方程式で考えなければいけない。それが新型スプーンのカーブデザインを決着させる上で最も難しいところ」


『スプーンを極める』

 スプーンでマス釣りを覚えたスプーン世代。かつて、どんな状況でもほぼサラマンダーとチヌークだけでサクラマスと勝負してきた伊藤は、その時代の経験と学びが釣りの幅を大きく広げてくれたと語る。
「まずは、ひとつのルアーを熟知することからだよ。例えば、スレた魚の目先を変えるためにルアーをとっかえひっかえしても、結局はいたちごっこで、誰にでも出来る。それだけでは必ず限界が来る。もちろんルアーのローテーションが効果的な時もあるよ。でも仮にそれで釣れたとしても、本当の意味で釣りの幅や技術が広がったとは言えないし、釣れた意味が自分の求めるものとは違う。その人にしか出来ない釣り、自分の操作で釣ったっていう満足感や楽しさを俺は大事にしたい。渓流釣りでもマス釣りでも、それがこの釣りの最高の醍醐味だからね。
 ルアーを流れに通して、表面上の流れと水の中とのギャップを埋める。スプーンはその作業が格段にしやすい上に、極めればどんな場所も攻めることができて、いろんな釣りができる。大切なのは、そのルアーの性能をしっかり引き出して、効果的な操作のバリエーションを完璧にやり尽くせているかということ。スプーンであれば、底波を生かしたドリフト、ターン、そこにトゥイッチのリズムをきっちりはめたり、あえて魚の目の前で浮き上がらせたり…。シビアな操作を覚えれば覚えるほど釣りが面白くなるし、そうやって釣りの幅は広がるものだよ。
 ひとつのルアーを使い込むことで、水中の流れの変化を正確に感じ取って、マスが着いている『点』を導き出す。そして、どの位置でどのタイミングで口を使わせるか。居着いている魚を誘い出すのか、あるいは送り込んで食わせるのか。そのルアーが持つ一番効果的な泳ぎをいかに魚の目先のスポットで引き出すか。そのアピールを放つきっかけとなるのがトゥイッチであって、それら全てを計算し尽くした操作が、コンスタントに釣るためには不可欠なんだ」
 いつも伊藤の話は、聞けば聞くほど、こんなにも深い世界があるのかと感じさせられる。誰にも教わることなく、ひとりで考えて、ここまで自分の釣りをストイックに磨いてきた情熱と経験に僕らは学ぶべきことがたくさんある。今回は話のさわりに過ぎず、全てを簡単に理解することなど到底できないが、だからこそ面白くて仕方ない。
「昔からのルアーマン、我々の世代のアングラーは、今ほどモノがなかった時代背景もあるにせよ、これと決めたらそのルアーで、意地になってもとことん攻め切るところに格好よさがあったんだ。まあ俺の場合、スプーンにこだわり過ぎて、ミノーの釣りに取っ掛かるのが少し遅れたところもあるんだけど(笑)」
 しかし、渓流釣り、マス釣り問わず、そのスプーンへの強いこだわりが、今の釣りとモノ作りに多大な影響を及ぼしている。シンキングミノーの優位性をいち早く見い出せたこともしかり、むろん、水をしっかりと掴んでなお且つ絶妙に逃がしながら浮きを抑える蝦夷スプーンの開発もしかり、そしてまた、2011年にリリースされたWOOD85の構想にもスプーンの持つ有効性が如実に落とし込まれている。
 ルアーと釣りを深く知り抜いていればこそ、こうして次の時代の新たな発展を生むことができたのだ。そのサイクルはこれからも止まることはない。


『2016年シーズンの66cm』

 さて、ここに紹介している12本のサクラマスは、伊藤が2016年シーズン、秋田の河川で4月から5月中旬にかけて手にした魚達だ。特に雪シロ期は河原が水没して、魚をネットに横たわらせる撮影場所がないため、いくつか簡単な手持ち写真で済ませているのはあしからず。
 そんな中、一際目を引くのは、雄物川水系で釣り上げられた66cmの雄マスである。
「ぱっと流れを見て、ここはデカイやつが潜んでいそうだな、っていうオーラがポイントから伝わってきたね。渓流のヤマメ釣りでもそうだけど、経験的に、よぎるものが確かにあるんだよ。押しの強い流れの中で、ドンッ!と来て、最初の数回のアワセではビクともしない。6回か7回位アワセを入れた時に、ようやく首を振り始めた。底の流れからぜんぜん抜けてこないし、これは70あってもおかしくないと思ったけどね」
 これまたテスト中のニューロッドのプロトブランクが、まだ余裕を残しつつも綺麗に絞り込まれ、ラインの先で重い流れに乗った極太のサクラが必死の抵抗を試みる。しかしブランクの秘める底なしのポテンシャルと釣り人の経験値が、完全に上回っていた。70cmはなくとも、どこか異質の迫力、あり余るインパクトを放つ一尾が伊藤のネットに収まった。
 さあ、2017年ももうすぐ秋田のマス釣りが幕を開ける。
 今年も大いなる感動を求め、ロッドを振りまくろう。
「贅沢を言えば、去年は朝駆けとか仕事の合間の釣りがほとんどだったから、今シーズンは昔みたいに河原に泊まって、本流をじっくり攻めれたら嬉しいなぁ(笑)。新しい武器を使って、とことん雪シロと対峙して、その中で多くのマスが応えてくれることを期待してるよ」













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